小さい広告 原田

 

  2015年春、名古屋から豊橋へと向かう名鉄電車で、手の甲に「もし」と2文字書かれた男子高校生と乗り合わせました。電車に乗っている間中、その真面目そうな彼の身に降りかかる様々な「もしも」に思いを巡らせました。後になって、それが「模試」てあることに気がつくのですが、私はそれまでの間に多くの仮想の彼を知ることができました。

 

 「小さい広告 原田」は、私の左手の甲を媒体とした広告事業を行う広告代理店です。

 手の甲は、本来プライベートなメモ帳であり、書かれている情報は個人的なものです。しかし、ここでは他者に向けて広く発信していきます。一方で、それを見た人にとっては自分へ向けられた情報ではありません。ここから情報を得ることは、手の甲の持ち主のプライベートを覗き見るということになります。しかし、同じくプライベートなメモ帳としての役割を持つスマートホンや手帳とは違い、手の甲自体は容姿の一部として、開かれた情報です。そこには、罪悪感のない覗きの愉しみがあるのです。

 手の甲の広告には、こうした発信する側と受信する側の意識の乖離の上に、広告としての効果があると考えています。

 1億人の目に止まる広告ではありませんが、100人の意識に残る広告を目指しています。

 

小さい広告 原田ウェブサイト
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